図面やイメージというカタチのないものを、実際のモノ(製品・商品)へと立体化する仕事のなかでも、額装師はちょっと特殊な職業です。なぜなら、木材などの材料から額縁というモノを作るだけでなく、絵画や写真、ポスターといった作品がよりよく見える額縁をチョイスするセンスが問われる、アートととても縁の深い職業だからです。額縁の大きさ、色や素材、枠の太さ、マットの有無など、ちょっとした違いが大きな効果を生む額装師の仕事を紹介します。
作品を額装するまで
打ち合わせをする
額装する作品を持参してもらい、アーティストとともに打ち合わせをして、どのような額にするのかを決定します。作品の持つ魅力はもちろん、飾る場所や、美術界での最近の流行なども考慮して、細かい仕様を決定します。
木材を加工する
木材を組み合わせる形に切りそろえたり、後でガラスをはめこむための溝を掘ったりします。そして、引き込み留め接ぎという技法で組み合わせて、固定します。これで、額縁の木枠の部分が出来あがりました。
やすりがけをする
木枠に丹念にやすりをかけます。木枠のささくれだった部分を取ると同時に、木目を浮き上がらせ、木それぞれが持つ特長を活かします。
色を塗る
木枠を着色し、ラッカーで保護します。例えば同じ白を使っても、薄く塗って木目を活かすか、濃く塗って光沢をだすかで、額装したときの印象は大きく変わります。
作品を額装する
ガラスをはめる、壁掛け用のビスを打つなどといった細部を仕上げたら、作品を保護する特殊な粘着テープを使って、額装します。作品の魅力を最大限に引き出すのが額縁の役割。このようにオーダーメイドで作るケースも多いそうです。
額装だけでなく、こんなこともしています
額装師の仕事は額縁制作にとどまりません。アートに関する深い造詣やセンス、さまざまなアーティストとの交流関係を活かし、さまざまな活動を行っている額装師も多いそうです。額縁制作という「ものづくり」を起点に、自分ならではの強みを活かせば、活動範囲が大きく広がっていきます。
工房のギャラリー利用
個展やグループ展の企画
額縁込みでの作品販売
額縁で作品の印象はこんなに変わります
額縁の役割は作品を保護するだけではありません。作品の魅力を最大限に引き出し、鑑賞者の視線をひきつけることが目的です。額縁の枠の太さや色、素材、作品の配置の仕方などによって作品の印象は大きく変わります。ここでは、額縁の違いによって印象がどのように変わるかをみてみましょう。
様々な額装
取材協力
FLATFILE モリヤコウジさん
ニューヨークで額縁制作を学ぶ。帰国後2010年、長野市善光寺近くに額縁工房&ギャラリーアートスペースFLATFILEを構え、活動拠点とする。FLATFILEでグループ展や個展などを企画し地元のアーティストとの親交を深めながら、一つひとつの作品を生かす額縁制作を続けています。