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出版物を影で支えているのが印刷職人です。紙の選定や文字組み、インクのノリや色濃度の確認、印刷内容の確認など、印刷職人には熟練したさまざまな技と緻密な確認作業が求められます。

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印刷の種類

文字や画像を版(はんこ)にして、それをインキで紙などに転写するのが印刷の原理です。自宅でパソコンなどを通じてプリンタから出力する「プリントアウト」とは異なり、印刷会社で印刷機を使って行う印刷は、印刷機が版に圧力をかけて用紙などに印字をします。印刷はさまざまな技術の進歩により、いくつもの手法が見られます。

■01 オフセット印刷

刷版(印刷に使用する版)についたインキを、ブランケットと呼ばれる樹脂やゴム製の転写ローラーにいったん移し(Off)、そのブランケットから印刷用紙に転写(Set)する印刷方法です。版から直接印刷するのではなく、媒介物(ブランケット)を介して印刷するので、版と紙が直接触れることがありません。もっとも低いコストと短い時間で大量に鮮明な印刷ができるので、世界の印刷物のほとんどはこの方法で刷られています。

オフセット印刷の原理

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オフセット印刷機構造

オフセット印刷は平版印刷(平らな版を用いる印刷方式)なので、版に凹凸はありません。版(アルミが材質の感光性があるもの)の上に化学反応でインク(油)が付く部分と水(湿し水)が付く部分を作り、水と油が反撥し合う性質を利用して、インクがのる部分とのらない部分とに分けて印刷をしています。

印刷職人の仕事

詳しくいうと、版の表面には感光剤が塗布されていて、紫外線やレーザー光などで感光させて現像をすると、画線部は親油性、画線部以外は親水性という異なる性質をもつようになります。そして、版にインキを塗布する前に湿し水を塗布すると、親水性を持つ部分に水が残り、その状態に油性のインキを塗布すると、画線以外の部分は水によってインキがはじかれ、親油性をもつ画線部にのみインキが塗布されるのです。

オフセット枚葉印刷

感光された版を現像すると、親油性をもつ版面部分(青い部分)のみが残り、ここにインキがのります。

■01 オンデマンド印刷

オンデマンド印刷とは、オンデマンド(On Demand:欲求に応じて) 必要な時に必要な数だけ印刷するシステムです。オフセット印刷に必要な「版をつくる」工程がなく、デジタル印刷機(高細密のトナーによるレーザープリンタ)を使ってデジタルデータを直接出力するので、大きな印刷機が必要ありません。そのため、1部~100部ほどの小部数のものや多品種の印刷物を早く低コストで印刷できます。

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オフセット印刷のワークフロー

オフセット印刷は、入稿をして製版(印刷用の版面をつくる)作業をし、印刷作業に入ります。入稿には、DTP(パソコン)を使って紙面の文章や図版をレイアウトしたり、スキャナを使って手書きの原稿やイラストをスキャンしてデータ化する方法などがあります。それらの入稿データを編集して製版しますが、製版にも「CTF」と「CTP」という2つの方法があります。

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Japan Color(ジャパンカラー)認定

従来、でき上がった印刷物の良し悪しは発注者(クライアント)の目によって決められており、明確な基準がありませんでした。そこで、発注者が標準的な基準値で指定した色を印刷会社が適切に再現できるよう、印刷物の品質基準の”共通の指標”として、社団法人日本印刷学会が制定したオフセット枚葉用印刷における標準規格を「Japan Color」(枚葉印刷用ジャパンカラー2007)といいます。ISO(国際標準化機構)とも互換性を持つ日本の標準的な色の基準で、Japan Color認証制度は不要な修正や刷り直しを削減するために創設されました。

オフセット印刷のワークフロー

CTP刷版による製版から印刷をする流れを紹介します。

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01.製版(プリプレス)

印刷用の版面を作ります。そのひとつの作業が、入稿データに対する色調整です。基本的にフルカラー印刷と呼ばれる印刷のほとんどは、シアン(藍色/C)、マゼンダ(紅色/M)、イエロー(黄色/Y)、ブラック(墨/K)の4色で印刷されますが、写真や絵画のスキャンデータやデジカメで撮影したデータなどは「光の3原色」とよばれるRGB(Red/赤・Green/緑・Blue/青)で表現されているので、印刷するためにCMYKに変換します。この変換時にどうしても色のくすみや変化が発生してしまうのですが、この変化を極力減らすように調整する作業をDTPのモニタ上で行います。

なお、写真や絵画などの場合、クライアント(写真家や画家などの制作者)がイメージする色合いを正確に表現するために、「プリンティングディレクター」とよばれる印刷の専門家がクライアントと打ち合わせをし、イメージや意図を理解して共有し、DTPで詳細な印刷設計を行います。

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02.刷版

書籍などの印刷物は1ページずつ印刷していくわけではありません。32ページ、16ページ、8ページといった単位ごとにDTPで原稿データを並べて印刷します(この配置作業を「面付け」とよびます)。その面付けしたデータを刷版機(プレートセッター)で版(感光剤が塗布されている青い板)に現像すると、版面部分(青い部分)のみが残ります。これが「刷版」です。印刷機にこの刷版をセットすると、青い部分にのみインキがのって、文字やイラスト、写真などを印刷することができます。

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03.インク

特色インクは、昔は印刷オペレーターが配合表に基づいて調合し、手で練って作っていましたが、最近は自動の調色機があるので、色合わせが格段に楽になり、色の再現性も高くなっています。ただし、作られたインクは、最終的にはオペレーターが確認して作り込んでいます。なお、インクの固さは気温によって変化してしまうため、機械の中は常に37℃を保つように設定されています。

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04.印刷

印刷機に刷版を取り付けて用紙をセットし、インキを充填させたら印刷機を動かして印刷します。刷りはじめは、見当合わせ(印刷の位置合わせ)や印刷濃度の調整などのためにゆっくりと機械を回しますが、徐々に回転数を上げていくと大量の印刷ができるようになります。
印刷機の操作方法は、昔はレバーやダイヤルといったアナログ式でしたが、今はボタンやパネルといったデジタル操作に変化しています。しかし、ハイテク化だけでは安定した高品質の印刷物を生産できず、「印刷オペレーター」の卓越した技術と経験が必要になります。なお、現場では1人の作業者が複数の異なる作業や工程を行う「多能工」が重宝され、印刷技術には「印刷技能士」という国家資格もあります。
そして、クライアントと印刷オペレーターをつなぐ「プリンティングディレクター」は、インキや紙、版設計、印刷機など全ての印刷工程に精通しているので、印刷のトラブルを未然に防ぐために、印刷工程でもさまざまなアドバイスを行います。
カラー印刷では、製品に影響しない余白の部分に「コントロールストリップ」という細長い棒状のカラーバーを一緒に印刷します。印刷オペレータはここに濃度測定器を当てて印刷濃度の数値を確認し、適正なインキ量にコントロールして印刷を進めます。

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05.製本

印刷された用紙(刷本)は、製本会社に搬出されて製本されます(印刷所で製本される場合もあります)。こうして書籍などの商品が完成します。

さらに詳しく知りたい方は動画をご覧ください。

取材協力
藤原印刷株式会社  印刷部部長 土井 修さん(左)・生産管理部部長 藤原隆充さん(右)
印刷部部長 土井 修さん(左)・生産管理部部長 藤原隆充さん(右)

ものづくりが好きだったことから1996年に入社。印刷機を扱う技術者として仕事をし、現在は印刷機の工程管理や品質管理、用紙の発注、印刷データのチェックなどを行っています。(土井さん)

飲食業のコンサルティング会社やインターネットのベンチャー会社での勤務を経て、2007年に藤原印刷に入社し、家業を継ぎました。印刷現場でのオペレーターを経て、現在は広報を担当したり、印刷後の後工程で製本所で型抜きや製本の指示を出しています。(藤原さん)

藤原印刷株式会社

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